抄録
シアノバクテリアのチラコイド膜では、モノガラクトシルジアシルグリセロール、ジガラクトシルジアシルグリセロール、スルホキノボシルジアシルグリセロール及びホスファチジルグリセロールの4種の脂質が保存されているが、我々は、糸状性シアノバクテリアAnabaena sp. PCC7120に、糖脂質がもう1クラス存在することを明らかにした。この糖脂質は、A. variabilis、Spirulinaなど他の糸状性シアノバクテリアにも存在したが、Synechocystis sp. PCC6803などの単細胞性のシアノバクテリアでは見られなかったので、糸状性シアノバクテリアに特異的な脂質であると考えられる。NMRによる構造解析を行った結果、この脂質はモノガラクトシルジアシルグリセロールのガラクトース残基にガラクトースがα(1→6)、α(1→6)の順に繋がったトリガラクトシルジアシルグリセロール構造を有し、さらに、3番目のガラクトースはメチル化されていると予想された。この糖脂質の合成を担う酵素の遺伝子を同定する試みについても報告し、糸状性ラン藻にのみ存在する意義について考察する。