抄録
翻訳因子EF-Gはタンパク質合成の翻訳伸長反応で主要な役割を担う。シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803のin vitro翻訳系を用いた研究から、EF-GのCys残基の酸化が活性酸素による翻訳の酸化傷害の主な要因になることが明らかになっている。本研究ではEF-G (Slr1463)について、酸化の標的となるCys残基を同定し、Cys残基のレドックス状態と翻訳活性との相関を調べた。Cys残基の改変およびペプチドマッピング解析の結果から、Cys105とCys242が酸化の標的となり、両者の間にジスルフィド結合が形成されることがわかった。さらに、このジスルフィド結合がチオレドキシンによって還元されることも明らかになった。標的Cys残基をSerに改変したEF-Gは、酸化処理を行ってもin vitro翻訳系において機能を保持していた。これらの結果から、EF-Gのレドックス状態による翻訳の制御機構および、光合成電子伝達系からチオレドキシンを介してEF-Gに至る還元シグナルの存在が示唆される。現在、NADPH-チオレドキシン還元酵素破壊株を用いて、in vivoにおけるEF-GのCys残基のレドックス状態を調べ、翻訳制御に至る還元シグナル伝達系路を検証している。