抄録
我々は、Fox Hunting Systemを用いてシロイヌナズナのgain-of-function型細胞死形質変異体を単離した。原因遺伝子をDEAR1(DREB and EAR motif protein 1)と名付け、解析を行ったところ、DEAR1過剰発現体では、ロゼット葉における過敏感細胞死の出現、病原体抵抗性遺伝子PDF1.2の発現上昇などが確認された。またDEAR1は、DREBドメインとEARモチーフを有し、生物的ストレスシグナル伝達の抑制型転写制御因子と考えられた。
PDF1.2の発現が上昇したことから、DEAR1の標的遺伝子の一つとしてAP2/ERF familyが予測された。DEAR1過剰発現体におけるマイクロアレイなどを行った結果、ERF9(ethylene-responsive element binding factor 9)がその候補として挙げられた。ERF9は、シス配列にDREBドメインが特異的に結合するDRE配列をもち、抑制ドメインであるEAR motifを有する転写抑制因子である。事実、ERF9欠損変異体ではPDF1.2の発現上昇と糸状菌に対する抵抗性が確認できた。
本発表では、ERF9と防御応答との関係を中心に議論していきたい。