抄録
TFIIB とその相同蛋白質である BRF は、それぞれ RNA ポリメラーゼ II と RNA ポリメラーゼ III の転写開始に不可欠な基本転写因子である。しかし、菌類や動物を用いたこれまでの研究により、RNA ポリメラーゼ I(Pol I)に対応するTFIIB 型の転写因子は存在しない事が明らかになっている。最近、植物のゲノム解析や他の研究により、植物が TFIIB や BRF と異なる、第3の TFIIB 型転写因子 pBrp を持つ事が明らかにされたが、その機能についてはこれまで不明であった。
本研究では、モデル植物である単細胞性紅藻 Cyanidioschyzon merolae (シゾン)を主に用い、pBrp の機能解析を行った。その結果、pBrp が Pol I に特異的な TFIIB 型転写因子であり、リボソーム DNA (rDNA) の転写に正に関わる事が明らかになった。更に、シロイヌナズナにおいても、pBrp が rDNA の転写に関わる証拠を得た。これらの事から、pBrp は植物において一般に、 Pol I と共に rDNA の転写に関わる基本転写因子であると結論付けた [1]。これらの結果を元に、TFIIB 型転写因子の進化過程について考察する。
[1] Imamura et al., (2008) EMBO J 27: 2317-2327