抄録
近年、植物のオルガネラRNAの部位特異的な切断、スプライシング、RNA編集や翻訳の制御にPPRタンパク質が関わっていることが明らかになってきた。PPRタンパク質はRNA結合能をもつPPRモチーフと機能未知の多様な保存配列モチーフをもつことが知られている。保存配列モチーフのひとつであるDYWドメインをもつPPRタンパク質がRNA編集酵素であろうという仮説が2007年にSaloneらによって提唱された。そこで我々はこの仮説を検証するため、先ずヒメツリガネゴケのミトコンドリアのRNA編集部位を調べ、11ヶ所のRNA編集部位を同定した。次にDYWドメインをもつPpPPR_71をコードする遺伝子を破壊した変異株を作製し、RNA編集への影響を調べた。その結果、この株ではミトコンドリアccmF mRNAのccmF-2部位のRNA編集が起こらないことを明らかにした。さらにPpPPR_71がccmF-2部位を含むRNAと特異的に結合することを、ゲルシフトアッセイにより明らかにした。これらの結果はPpPPR_71がccmF-2部位の認識因子であることを強く示唆している。DYWドメインがRNA編集酵素であるかどうかを調べるため、ミトコンドリアin vitro RNA編集系(Takenakaら, 2003年)に準じてPpPPR_71のRNA編集活性を調べたので、その結果も合わせて報告する。