抄録
トウモロコシ幼葉鞘などの光屈性の光量反応曲線の解析によって、パルス照射によって誘導される1次光屈性と2次光屈性、および照射時間に依存して反応が増大する時間依存光屈性(全て正の光屈性)が同定されている(Iino, 1990)。本研究では、イネ幼葉鞘を用いて光量反応曲線を解析し、フォトトロピン信号伝達系との関係を調べた。イネ幼葉鞘の光屈性はトウモロコシ幼葉鞘などに比較すると弱いため、パルス照射による光屈性の解析が困難であった(Neumann and Iino, 1997)。今回、重力屈性が低下したlazy1突然変異体(Yoshihara and Iino, 2007)を用いることによって、パルス照射による反応を含めた光量反応曲線の解析を達成した。その結果、1次光屈性、2次光屈性、時間依存光屈性がトウモロコシ同様に誘導されることが明らかになった。更に、1次光屈性よりも低光量のパルスで誘導される光屈性を新たに同定した。lazy1突然変異体とcpt1突然変異体(Haga et al., 2005)などを交配して作出した2重突然変異体を用いることによって、光量反応曲線で分離される反応は全てフォトトロピン信号伝達系に依存することが明らかになった。この結果から、光屈性の光量反応曲線に見られる多相性は、複数の光受容体の関与ではなく、フォトトロピン信号伝達系の複雑性を反映していることが示された。