日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シアノバクテリア時計タンパク質のATP加水分解が生みだす概日時計発振メカニズム解析
*寺内 一姫岩田 智成角田 明奈近藤 孝男
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p. 0300

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抄録
シアノバクテリアの3つの時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCとATPにより、概日時計再構成系が構築された。これは時間を発振するメカニズムがタンパク質の生化学的性質により説明可能であることを意味する。概日時計は、24時間周期で振動すること、温度が変化しても周期は変化しないという温度補償性など固有の特徴をもつ。KaiCのATPase活性は温度非依存的であり概日時計の温度補償性の基盤となる。さらにKaiC周期変異タンパク質を用いたATPase活性の解析により、ATPase活性が概日時計の速度を決めていることが明らかになった。今回、非リン酸化模倣変異体であるKaiC-AA(S431A/T432A)のATPase活性が野生型よりも高く、特にKaiA存在下においては野生型の約20倍に上昇することを見出した。さらに興味深いことに、KaiA存在下においてこの活性は一般的な酵素活性と同様に温度依存性を示すことが明らかになった。KaiCは各プロトマーの境界にATPが結合することで六量体を形成し、またリン酸化部位は結合したATP近傍に位置することが結晶構造解析より明らかになっている。そのため、ATP加水分解反応は構造変化やリン酸化と深く結びついていることが推察される。野生型およびKaiC-AAの構造変化解析と併せ概日時計の性質の基盤となるメカニズムを考察する。
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© 2009 日本植物生理学会
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