抄録
Pb1は、直接に収量減につながり、また食味や品質低下の原因となるイネの重要病害のひとつとであるイネ穂いもちに対する抵抗性遺伝子として初めて同定された。インディカ品種「Modan」に由来するPb1品種「St. No.1」と日本品種との約11,500 F2からの組換え系統解析に基づく遺伝地図により、穂いもちPb1領域を25.9kbの5遺伝子に絞り込み、さらに、発現解析及び相補性検定によりPb1遺伝子(P15)を確定した。Pb1遺伝子は、塩基数3,897 、アミノ酸数1,296でイントロンはなく、これまでに単離された真性抵抗性遺伝子と類似したCC-NBS-LRR構造を持つ。イネの生育ステージ別のPb1の発現パターンは、Pb1の特長である成体抵抗性との相関を示した。すなわち、Pb1による抵抗性はイネの生育ステージとともに上昇し、止葉期や出穂期に最高に達するが、Pb1遺伝子の発現もこれと同様のパターンで上昇した。単離されたPb1とその約60kb上流に存在する1アミノ酸異なるPb1'は、タンデムに配列した重複遺伝子であり、それぞれを単独で保有する系統での遺伝子発現解析から、Pb1はPb1'の約150~300倍の発現量を示した。このことからPb1は遺伝子重複により機能が創生された抵抗性遺伝子であると推定された。本課題は農林水産省グリーンテクノ計画(QT-4002)の支援を受けた。