抄録
高等植物の頂端分裂組織は、未分化状態を保ちながら分裂・増殖する細胞群であり、茎頂―根端軸方向への成長や器官原基の形成に必要な細胞を提供するという重要な役割を担っている。シロイヌナズナにおける分子遺伝学的解析から、地上部の分裂組織である茎頂分裂組織の領域決定には、細胞外ドメインにleucine rich repeat (LRR)をもつ受容体CLAVATA1(CLV1)/CLV2と、分泌性のリガンドであるCLV3との特異的結合による細胞間情報伝達系が重要であると考えられている。CLV3 はシロイヌナズナで32遺伝子報告されているCLV3/ESR (CLE )ファミリーの一員であり、C末に保存されたCLEドメインの12アミノ酸配列を機能単位とすることが当研究室で明らかにされている。
CLV3の機能単位である12アミノ酸の化学合成ペプチド(CLV3ペプチド)は、内生のCLVシグナル伝達系を介して茎頂分裂組織の領域を縮小する効果を持つ。これまでに、CLV3ペプチド添加による花茎伸長の有無を指標にサプレッサースクリーニングを行い、CLV3ペプチド耐性変異体(CLV3 peptide insensitive; cli )を単離した。本大会では、cli1突然変異体の表現型、およびCLI1 の遺伝学的・生化学的特性について解析した結果を報告する。