抄録
我々はこれまで、光治療用色素として有用であるとの観点から、クロロフィルa(Chl a)の長鎖フィトールが外れた水溶性のクロロフィライド a(Chlide a)を得ようと試みてきた。しかし、強酸処理によって長鎖フィトールをエステル加水分解すると、中心金属Mgも外れたフェオフォーバイドaが生成してしまう。そこで、市販の酵素を作用させてChl aの長鎖フィトールのエステル結合のみを穏やかに加水分解することを試みた。酵素としてエステラーゼ(エステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、フォスファターゼ)とプロテアーゼ(αキモトリプシン、スブチリシンカールスバーグ、パパイン)を用い、含水有機溶媒中、30℃、暗所にて48時間インキュベーションした。その結果、パパインを使用したときのみChlide aが生成し、また未知な色素の生成も確認された。HPLC、吸収スペクトルおよびFAB-mass分析から、未知の色素がChl dであることを明らかにした。反応温度30℃でのChlide aおよびChl dの収率はそれぞれ8%および2%であったが、反応温度を70℃に上げることにより、18%および4%に向上した。