抄録
シロイヌナズナの根の維管束は、中心柱の直径を結ぶ点となる最外層の二か所に原生木部が形成され、この原生木部軸と直交する直径を結ぶ二か所に原生篩部が作られる二元型の構造をとる。この対称性を持つ維管束パターンの形成は発生段階で厳密に制御されていると考えられる。しかしながら、その分子機構に関してはよくわかっていない。そこで私達は根の維管束パターンを制御する分子機構に迫るため、その対称性が失われる変異体lonesome highway (lhw) を単離し解析を進めている。lhw変異体は、野生型では二本のラインとして観察されるxylem pole pericycleのマーカーJ0121の発現が一つになるものとして単離された。lhw変異体の根は、一つの原生木部、一つの原生篩部のみが形成される一元型の維管束パターンとなっていた。また、。lhw変異体の維管束では細胞数の減少が観察された。LHWの原因遺伝子はbHLHをコードするタンパク質であり転写因子であると考えられる。そこで現在、LHWと相互作用する因子の解析および作用機構の解析を進めている。