抄録
UDP-アラビノースムターゼ (UAM) は植物の糖ヌクレオチド代謝経路においてUDP-アラビノースの5員環、6員環の相互変換を行う酵素であり、アラビノフラノース残基を含む多糖類や糖タンパク質の合成に必須である。UAMはRGP (Reversibly glycosylated polypeptide) と命名された、UDP-グルコースと可逆的に結合するタンパク質と同一である。しかし、UAMがこのRGP活性とムターゼ活性の2つの活性を併せ持つ生物学的意義は不明である。そこで我々は、RGP活性により糖を結合するアミノ酸残基の特定ならびにそのアミノ酸残基のムターゼ活性への関与を調べた。UDP-グルコースと反応させたUAMをLC/MS分析に供したところ、グルコースは158番目のアルギニン(R158)残基に結合していた。このR158を含む3つのアルギニン残基をアラニンに置換したUAMを作成しムターゼ活性を比較した結果、R158A置換体ではムターゼ活性は検出されなかった。一方、R151A置換体は非置換体と同程度のムターゼ活性を有し、R165A置換体では非置換体の6%程度の活性が見られた。これらの結果からR158が糖と結合するアミノ酸残基であり、RGP活性とムターゼ活性は同一のアルギニン残基上で起きることが明らかになった。