抄録
熱帯雨林の早生樹種ファルカタは、地球上で一番成長の早い樹木である。ファルカタは、マメ科の樹木であるため、根粒菌(Rhizobium属)と共生して空気中の窒素を固定する。更に、菌根菌(phosphorus-promoting mycorrhizal fungi)とも共生してリンも獲得できる。
ポプラのセルラーゼを構成発現するファルカタは、野生株と比較してセルロース量は変わらなかったが、キシログル量が減少した。このセルラーゼは、セルロースミクロフィブリル表層の非結晶部位を分解し、そこに編み込まれているキシログルカンを除去する。その結果、細胞壁の塑性が増大し、成長が促進された。また、葉の開閉運動は、葉の基部にある運動細胞(motor cell)の急速な膨圧変化によって起こるが、細胞壁の力学的性質が変わったため、昼夜の膨圧変化に敏感に対応するようになった。
そこで、本研究では、セルラーゼを構成発現するファルカタ木部における糖化性、およびエタノール生産量について検討した。形質転換ファルカタ木部における糖化レベルは、野生株に比較して増加した。木部キシログルカンの除去が糖化性の向上をもたらしたと推察される。