日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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光中断によるイネ開花抑制の分子機構の解析
*伊藤 博紀野々上 慈徳矢野 昌裕井澤 毅
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p. 0496

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抄録
真夜中の光中断が短日植物の開花を抑制することはよく知られている。モデル短日植物のイネの分子遺伝学的研究から、光中断による開花抑制は、フィトクロムを介したフロリゲン遺伝子Hd3aの抑制が原因であることが報告されたが、詳細な分子機構は明らかではない。
我々は、イネの光周性開花期制御機構を知るために、促進因子Ehd1と抑制因子Lhd4/Ghd7に注目して研究を行ってきた。Ehd1は、イネ特異的なHd3a誘導因子であり、短日条件の朝方の青色光に応答して転写が誘導される。一方、Lhd4/Ghd7はフィトクロム依存的に長日条件下で転写誘導されることから、長日条件の開花抑制因子である考えられた。
今回、我々は、朝のEhd1の転写が、赤色光の光中断により抑制されることを明らかにした。この時、Lhd4/Ghd7の転写は、Ehd1の転写を抑制したNBmaxのタイミングの光パルスにより、長日条件と同レベルの誘導を示すことから、短日条件では、Lhd4/Ghd7の光に対する応答性が真夜中にシフトすることで、光中断による開花抑制が起こると考えられた。一方で、赤色光と青色光の連続照射はEhd1の誘導を抑制できないことから、光中断の抑制は比較的長時間維持されるものの、その開始にはタイムラグがあることが示唆された。以上を踏まえて、光中断の分子機構と本来のイネの光周性花芽形成機構の関係について考察する。
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© 2009 日本植物生理学会
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