日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネ幼苗の低温下の光合成に及ぼす高地温の影響
*鈴木 健策Ratel Emilien
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p. 0506

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抄録
イネ(あきたこまち)では、幼苗全体を10℃前後の低温に1週間程度曝しても可視的な障害は起こらない。しかし地上部だけを低温に曝すと2、3日で変色、枯死等の可視的障害が起こる。この障害に先立ち、光合成電子伝達機能に著しい障害、すなわち光化学系IIとIの間に電子伝達の遮断が起こる(Suzuki et al. 2008)。これらが水耕液中の硝酸イオンに依存して起こることは前回報告した。しかし光合成機能解析を25℃に戻してから行ってきたため、この「遮断」が低温障害の原因か結果かは不明であった。今回は「遮断」の原因を知る手掛かりを得る目的で、暗低温処理中に9℃で光合成機能解析を行った。その結果、低気温・低地温(9℃/9℃)では光化学系?の電子伝達速度が無処理(25℃/25℃)と同程度に高いこと、低気温・高地温(9℃/25℃)では光化学系IもIIも電子伝達速度が著しく低く、光照射の直後から光化学系IIが過剰還元状態で光化学系Iが過剰酸化状態であること等がわかった。一方、単離チラコイド膜における光化学系IIと光化学系Iの間の電子伝達の部分反応解析では、光のもとで高地温・低気温処理を行っても「遮断」を説明できるような特異的な活性低下は認められなかった。今回の結果は、高地温・低気温での「遮断」が低温処理中に既に起きていることを示している。また、サイクリックな電子伝達の機能停止がその原因の可能性がある。
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© 2009 日本植物生理学会
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