抄録
シュロは、ヤシ科植物の中で最も高い耐寒性を示し、その葉は-14℃まで被害を受けない。一般的に高耐寒性植物でも夏は殆ど凍結に耐えないが、シュロ葉は夏の生育期間でも冬と同等の耐寒性を示す珍しい植物である。その耐寒性機構は、DTAやMRI観察から深過冷却によることが判っている。その深過冷却の機構を探るため、葉のメタノール抽出画分について、研究を進めている。メタノール抽出により、葉の深過冷却能は著しく低下する。この画分には、氷核活性細菌やフェナジン、ヨウ化銀などの氷核活性を抑制する作用がある。また、水の過冷却を安定化させる作用がある。本画分を更に、水画分、酢エチ画分、ブタノール画分に分配し、各画分の抗氷核活性と過冷却安定化能について調べた。その結果、過冷却安定化能は、酢エチ画分≧ブタ画分>水画分の順であった。氷核活性細菌に対する抗氷核活性は、酢エチ画分≧ブタ画分>水画分の順であったが、フェナジンに対しては、水画分≒酢エチ≒ブタ画分で、ヨウ化銀に対しては、水画分>酢エチ>ブタ画分であった。これらの結果は、氷核活性物質により有効な抗氷核活性成分が異なる可能性を示唆した。また、抗氷核活性を定量的に表す手法を開発した。本方法を用いて、シュロ葉メタノール抽出画分の各氷核活性物質に対する抗氷核活性の定量的評価を試みた。