日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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植物由来クチナーゼの単離同定
*高橋 健太郎嶋田 知生西村 いくこ
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p. 0524

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抄録
クチナーゼはエステラーゼの一種で、植物のクチクラを構成するクチンを分解する酵素である。これまで、クチナーゼは主にカビにおいて研究されてきた。カビは植物に感染する際に、クチナーゼによって植物の防護壁であるクチクラを分解して、菌糸を侵入させると考えられている。一方、植物由来クチナーゼに関しては、花粉で活性が検出されているにすぎない。花粉管が柱頭に侵入する際、柱頭のクチクラを分解するためにクチナーゼは働いていると考えられている。しかし、植物由来クチナーゼの分子実体は未だ不明である。本研究では、シロイヌナズナを用いて植物由来クチナーゼを単離同定することを目的とした。まず、シロイヌナズナの遺伝子の中で、エステラーゼをコードするものをリストアップした。その中で花粉特異的な発現パターンを示すAtCUTI1に着目した。AtCUTI1を異所的に発現する形質転換体を作製すると、葉で「器官接着」や「トルイジンブルーで容易に染色される」などのクチクラ欠損に特徴的な表現型が観察された。また、AtCUTI1とGFPの融合タンパク質 (SP-GFP-AtCUTI1) を葉で発現させると、GFP蛍光が細胞外で観察された。以上の結果から、AtCUTI1は細胞外でクチンを直接分解するクチナーゼであることが示唆された。
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© 2009 日本植物生理学会
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