日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ケイ酸輸送体Lsi6によるイネ生殖生長期のケイ酸分配
*山地 直樹馬 建鋒
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p. 0542

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抄録
イネは代表的なケイ素集積植物であり、特に出穂期のケイ酸吸収はその収量に大きく影響することが知られている。我々はこれまで、根の効率的なケイ酸吸収を担う輸送体Lsi1, Lsi2 (Ma et al. 2006, 2007)と、導管からのアンローディングを担い葉のケイ酸分配に影響するLsi6 (Yamaji et al. 2008)を単離・解析してきた。今回我々はLsi6が生殖生長期のケイ酸分配にも重要な役割を果たしていることを明らかにした。
栄養生長期から生殖生長期への転換は養水分の流れの大きな変化を伴い、その分配には節が重要な役割を担っていると考えられている。Lsi6は出穂期以降の上位の節で著しく発現が増大し、特に大維管束の周縁部の木部柔組織において導管に面した極性局在がみられた。Lsi6のT-DNA挿入変異株では穂(籾、穂軸、穂首)のケイ素蓄積量が約1/3に低下し、逆に止め葉の葉身には2倍の蓄積が見られた。また切除した未熟穂について水分の蒸散を測定したところ、T-DNA挿入株では蒸散速度が有意に増大し、「白穂」が容易に再現された。これらの結果から、蒸散流に伴って根から地上部へと吸い上げられたケイ酸は、節において穂の維管束へと積み替えられ、その過程のうちLsi6は下位の導管からのケイ酸の積み降ろしを担うと考えられた。
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© 2009 日本植物生理学会
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