抄録
Synechococcus sp. PCC 7942の転写因子SmtBは、メタロチオネイン様タンパク質SmtAをコードするsmtA遺伝子の転写を制御するリプレッサーであり、細胞内のZn2+と結合するとオペレーター/プロモーター領域(o/p)に対する親和性を失い、smtA遺伝子の転写を誘導させる。最近ゲノム情報が公開されたSynechococcus sp. PCC 7002にも、7942と同様のメタロチオネイン様タンパク質SmtAおよび、その転写因子と思われるSmtBが存在する。しかし、7942-SmtAは比較的低濃度のZn2+存在下で発現するのに対し、7002-SmtAは高濃度のZn2+存在下で発現し、重金属ストレスへの応答に差異がある。7942-SmtBと7942-o/p、7002-SmtBと7002-o/pによりそれぞれによって形成されるタンパク質-DNA複合体の種類をゲルシフト法により解析すると、7942-SmtBでは4種の複合体を形成するのに対し、7002-SmtBは6種の複合体を形成することがわかった。また、タンパク質-DNA複合体の形成を阻害するZn2+濃度は異なっていた。これらの原因として、7942-SmtBと7002-SmtBにおけるZn2+結合サイトの構造の違い、およびo/p領域における認識配列の違いなどが関与すると思われる。