日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ジガラクトシルジアシルグリセロールの欠乏はSynechocystis sp. PCC 6803の熱感受性を増大させる
*水澤 直樹酒田 慎也桜井 勇佐藤 直樹和田 元
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p. 0573

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抄録
近年、光化学系超分子複合体の構築におけるチラコイド膜脂質の重要性が認識されつつあるが、各脂質の光合成における機能は未解明な点が多い。私達は光合成におけるジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)の機能を明らかにするため、DGDGを合成することができないSynechocystis sp. PCC 6803の変異株(slr1508破壊株;以下変異株)を作製し、その変異株を用いてDGDGの欠乏が光合成に与える影響を研究している。本研究では、熱ストレス条件下でのDGDG欠乏の効果に焦点を絞って解析を行った。
変異株は弱光、30℃の光独立栄養条件下では野生株と同様に増殖し、両者の増殖には有意な違いが観察されなかった。しかしながら、培養温度を38℃に上げると変異株で特異的な増殖阻害が起こり、光強度を上げると増殖阻害が促進された。光合成の強光阻害の実験により、変異株では光合成系の光損傷の促進と光修復の阻害が38℃で顕著に起こることがわかった。さらに、38℃では変異株のみ酸素発生活性が暗失活すること、変異株の酸素発生活性は野生株に比べヒドロキシルアミン処理により容易に失活することから、変異株の酸素発生系は極めて不安定な状態にあることがわかった。以上の結果から、変異株で見られる高温、強光条件下での光合成活性の低下および増殖阻害は、酸素発生系の不安定性に起因することが示唆された。
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© 2009 日本植物生理学会
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