抄録
高等植物葉緑体のチラコイド膜上で、光化学系II複合体(PSII)はチラコイド膜が複数重なったグラナに多く存在する。葉緑体が光・熱ストレスを受けると、PSII反応中心結合D1タンパク質が特異的に損傷を受け、FtsHプロテアーゼによって分解・除去される。その後、PSIIは新たに合成されたD1の挿入によって修復される。ホウレンソウからチラコイド膜、ストロマチラコイド、グラナ、PSII膜、およびPSIIコア膜を調製し、FtsH抗体を用いたウエスタン分析を行ったところ、FtsHはストロマチラコイドに多く存在することが分かった。従って、損傷を受けたD1タンパク質の分解はストロマチラコイドで行われると考えられる。大腸菌のFtsHプロテアーゼは直径数nmの六量体リング構造をしていて、その分子量はおよそ400kDaである。葉緑体チラコイド膜において、六量体FtsHが存在しているのかどうかは明らかではない。ここでは、ホウレンソウのチラコイド膜におけるFtsHの分布、存在状態および安定性について報告する。