日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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極低温フェムト-ピコ秒時間分解蛍光測定による乾燥地衣類光化学系IIの高速励起エネルギー消光過程の解析
*小村 理行三宅 博之山岸 篤史柴田 穣岩崎 郁子山本 好和伊藤 繁
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p. 0578

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抄録
地衣類は菌類と藻類が共生して光独立栄養的に生育し、極度の乾燥環境でも生存可能である。乾燥時には光化学系II(PSII)が吸収した光エネルギーはただちに消光され、阻害を防ぐと考えられてきた。最近、740 nmに蛍光を示すクロロフィル(Chl740)が緑藻Trebouxiaを共生する地衣類のPSII内部で消光分子として機能すると提唱された[1]。我々は乾燥地衣類生細胞の4-300 Kでの超短時間領域の蛍光減衰をアップコンバージョン法とストリークカメラを組み合わせて測定し、Trebouxia型地衣類におけるChl740の有無、Chl740への励起エネルギー移動、蛍光消光速度、Chl740の結合部位を検討した。Trebouxia型地衣類ムカデコゴケ、ウメノキゴケでレーザー照射後1 ps以内に立ち上がり数ピコ秒で減衰するChl740の蛍光が観測された。結果をもとに、Chl740を加えたPSII内部の励起エネルギー移動過程をモデル化し、蛍光減衰を再現した。Chl740への励起エネルギー移動速度、消光速度を見積もり、Chl740が消光分子として機能する可能性が示された。同様の測定をCoccomyxa型、Trentepohlia型地衣類でも行い、得られた知見について報告する。
[1] Veerman et al., Plant Physiol., 145, 997-1005 (2007)
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© 2009 日本植物生理学会
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