日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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カルジオリピン合成酵素はカルジオリピン量を制御できる
*片山 健太Akbari HanaFrentzen Margrit和田 元
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p. 0224

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抄録
カルジオリピン(CL)は、真正細菌から動植物のミトコンドリアにまで広く存在する特徴的な構造をもったリン脂質である。私たちは真核多細胞生物で初めてCL合成酵素遺伝子CLSをシロイヌナズナにおいて同定し、その遺伝子にT-DNAが挿入されたタグラインclsを解析している。cls/clsは胚発生を中心として生育速度が遅延し、CLが局在するミトコンドリアの形態が異常であった。また、生育遅延及びミトコンドリア形態異常の両方について、 cls-1/cls-1よりもcls-2/cls-2で異常の程度が大きかった。そこで、これらの変異体の芽生えを[33P] Piを用いて長時間ラベルすることで、CL量を測定した。その結果、全リン脂質中に占めるCLの割合は、WT, CLS-2/cls-2, cls-1/cls-1, cls-2/cls-2の順に低下していた。また、外来エストロゲンの投与によりCLSの発現を誘導できるpER8:CLScls-2/cls-2に導入した変異体では、根の伸長が外来エストロゲン濃度依存的に回復したが、この変異株のカルスでは、エストロゲンの投与によりCL量のみが上昇した。以上の結果は、CLSが植物体におけるCL量を制御可能であり、CL量が一定量以下となることが様々な異常の原因であることを示唆している。また、今回の研究によりclsがCLの機能解析に有用であることが明らかとなった。
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© 2010 日本植物生理学会
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