日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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早春の林床光環境に対するカタクリ光合成系の順化
*河野 優
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p. 0618

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抄録
落葉広葉樹林であるコナラやクヌギなどから成る二次林は、春から秋に葉を展開し、冬に落葉する。そのため、その林床に生育する植物は、季節変化する光環境に対応して生存していると考えられる。春(3~5月)に林床で葉を展開し、他の期間休眠する植物(春植物)であるカタクリ(Erythronium japonicum Dencne)は、日当たりの良い落葉期の光環境を利用している。本研究では、春の林床光環境の特徴を詳細に調べ、その光環境に対するカタクリの応答を検討した。神奈川大学構内の二次林において光強度を測定した。その結果、林床では直射日光に対して平均相対光強度40%であり、25~95%の範囲で激しく変化した。光強度変化の時間成分をフーリエ解析したところ、10分周期の時間変化が卓越していた。林床で生育したカタクリ(林床個体)と直射日光下で生育したカタクリ(明環境個体)の光合成を比較した。10分周期の強光/弱光変動光を照射したところ、林床個体は強光照射時の光合成の立ち上がりが速く、この10分間の最大効率の光合成速度に対する損失は7%であったのに対し、明環境個体では20%であった。同様に、弱光照射時では林床個体は10%の損失であった。明環境個体では弱光照射直後に一時的な光合成速度の低下が見られ、このときの損失は30%であった。この一時的な光合成速度の低下は、光呼吸が顕著に現れていることを示唆した。
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© 2009 日本植物生理学会
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