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rid3とrgd3は、不定根の形成・成長を指標に単離した、シロイヌナズナの温度感受性突然変異体である。これらの変異体は不定芽形成(シュート再生)に関しても顕著な温度感受性を示すが、脱分化や基本的な細胞増殖の温度感受性は軽微である。責任遺伝子については、RID3が新規WD40リピートタンパク質をコードすること、RGD3がTBP結合因子をコードすることがわかっている。
本発表では、シュート再生過程におけるCUC・STM経路の遺伝子発現および細胞増殖の空間的なパターンと、それに対するrid3変異、rgd3変異の影響を報告する。不定芽の頂端分裂組織はシュート誘導培地移植後にカルス表層から生じた増殖細胞の集塊に由来し、この細胞集塊でははじめCUC1、後にSTMの高発現が認められた。rid3変異は制限温度下でこれらの発現を異常に高進し、rgd3変異は逆に発現を抑制した。細胞集塊の形成に関わる細胞増殖に対しても、rid3変異は促進的に、rgd3変異は阻害的に作用した。また、RID3がカルス表層では細胞集塊を避けるように発現し、RGD3が細胞集塊を中心に発現することも明らかになった。現在rid3の胚発生の表現型を解析中であり、これと併せて、器官再生と胚発生に共通した、茎頂分裂組織を新たに形成する機構について論じたい。