抄録
過去に行われた古典的な外科手術実験によって、植物の頂端分裂組織の重要性や頂端分裂組織と原基の間でのシグナル伝達の重要性が示されている。
近年のシロイヌナズナにおける遺伝学的な研究により、頂端分裂組織の形成や維持及び葉原基の形成や成長に関わる鍵分子の同定がなされ、発現パターンや遺伝子機能が明らかになっている。しかし、頂端分裂組織から葉原基へのシグナル伝達のタイミングやシグナルの空間的な伝達経路の解明には至っていない。このような時間及び空間レベルでの分子機能を解明するためには、発生中の組織において部分的な細胞破砕を行い、その影響を分子レベルで観察することが非常に有効な手段である。これまで、トマトではレーザーアブレーション系が確立されているが、器官特異的な発現マーカーが揃っておらず特異的な細胞の破砕には適さない。そこで、本研究ではシロイヌナズナを用いレーザーアブレーション系の確立を試みた。レーザーアブレーションは、UVパルスレーザー(波長:349nm)を搭載した共焦点レーザー顕微鏡を新たに組み立て実現した。現時点では、UVレーザー照射後にCLAVATA3::GFPなどの頂端分裂組織に特異的に発現するGFPマーカーラインにおいて、GFP蛍光の消失を確認しており、標的細胞の破砕は成功していると考えられる。発表ではその効果についても報告予定である。