抄録
植物の葉は基部先端部軸、中央側方軸、向背軸にそって成長し左右対称で扁平な形態を獲得する。シロイヌナズナの asymmetric leaves1 (as1), asymmetric leaves2 (as2) 変異体は3つの軸全てに異常がある多面的表現型を示し葉が弱い裏側化を示す。AS1, AS2 遺伝子は茎頂メリステム維持に関わる class 1 KNOX 遺伝子や葉の裏側化遺伝子を抑制し、葉の細胞の分化状態の維持と葉の表裏を確立する。これまでにリボソーム RNA の発現制御因子、リボソームタンパク質遺伝子の変異が葉の裏側化を亢進することが報告されている。我々は AS1, AS2 とリボソーム関連遺伝子の相互作用をさらに調べるため、リボソーム 60S サブユニットの阻害剤HT-2と 伸張因子EF-2 の阻害剤フシジン酸を野生型、as1, as2 変異体に投与した。HT-2を与えた野生型では顕著な生育阻害を示し、 as1および as2 変異体には顕著な生育阻害と本葉の発生異常が観察された。フシジン酸を与えた as1, as2 変異体では、葉の裏側化が亢進した。このことは、これらのターゲットが AS1, AS2 遺伝子のエンハンサーである可能性を示唆している。現在これらの化合物のターゲットと予想される遺伝子の遺伝学的解析と葉の極性確立に関する裏側因子の発現解析を進めている。