抄録
タバコNIC2遺伝子座には一群のERF遺伝子がクラスター化して存在している。タバコ培養根において過剰発現、発現抑制、及び、ドミナント抑制型の発現を行い、これらERF遺伝子が生合成のマスター制御因子であることを示した。また、ERFはニコチン生合成遺伝子のプロモーター内に存在するGCC boxを認識し、生合成の既知の全構造遺伝子を特異的に活性化する。いずれのERF遺伝子も生合成器官である根で発現するとともに、ジャスモン酸によって誘導されたが、それらの誘導の時間依存的パターンは遺伝子メンバー間で異なっていた。互いに高い相同性を示すERF遺伝子群は遺伝子重複によって生じた後、それぞれが転写因子として機能分化したと考えられた。ERF遺伝子が他の因子とともにどのようにニコチン生合成のジャスモン酸応答に関わるのか、及びジャスモン酸誘導性のERF遺伝子サブクラスが種々の生理活性アルカロイドの生合成に関与する可能性を考察する。