抄録
E.globulus は成長性、パルプ化適性に最も優れた樹種として知られており、オーストラリア、チリ、ポルトガルなどでの植林においては主要な樹種とされている。しかし、E.globulus は発根率の低さ、根系の発達不良などから挿し木による増殖が難しい。そこで、我々はE.globulus の組織培養によるクローン苗増殖法について検討している。
今回、高濃度CO2(1,000ppm)条件下でのE.globulus の不定根形成に与える影響について調査した。その結果、高濃度CO2により、E.globulus の発根率は著しく上昇し、根系の発達(根の数、長さ)が確認された。リブロース二リン酸カルボキラーゼ小サブユニット(rbcS ) の遺伝子発現を調べたところ、高濃度CO2 施用後2~4日目から発現の上昇が見られた。これは、高濃度CO2 によるE.globulus の発根率の上昇は光合成活性の増加によるものであることを示唆している。また、オーキシン極性輸送阻害であるN-1-naphthylphalamicb acid (NPA) 処理により不定根形成が抑制されることから、高濃度CO2条件下での発根率上昇には、内生オーキシンが重要な役割を果たしていることが考えられる。現在、不定根形成に内生オーキシンが与える影響について詳細に検討している。