抄録
植物は病原因子から身を守りつつ成長する為の感染応答の仕組みを持つ。我々は、感染応答機構で働くCC-NB-LRRファミリーに属するUNI遺伝子の変異により、感染応答反応の一部が常に生じるとともにユニークな形態の異常を示すuni-1D変異体を用いて、感染時における形態変化というほぼ未解明な現象の解明に取り組んでいる。この研究は、感染応答と形態形成を結ぶ分子機構に迫るとともに、形態形成の制御機構を解明する為の全く新しい切り口の発見にも結びつくと考えている。
uni-1D変異体の特徴として、感染応答の指標の一つであるPR1/5遺伝子の発現上昇、葉腋での異所的な腋性分裂組織形成、茎頂分裂組織の維持機構の異常、の三つがある。まず分裂組織の制御に関わる遺伝子の変異体や発現レポーターなどを用い、uni-1D変異体での分裂組織に関わるイベントを解析した。さらに、uni-1D変異体の形態異常を抑圧する変異体を複数単離し解析した。これらから、uni-1D変異体の上記の特徴に、共通して関わる機構と別個に関わる機構の存在が示唆された。興味深いことに、抑圧変異体の中には単独変異体として分裂組織にユニークな異常を示すものもあり、uni-1D変異体で影響を受ける機構には野生型においても形態形成に関わるものがあることが示された。uni-1D抑圧変異体探索が形態形成の新奇な制御機構の発見につながると期待される。