抄録
ICHの遺伝毒性ガイドライン[S2(R1)]には遺伝毒性に関するエンドポイントの一般毒性試験への組込みに関する記述がなされ,組込み試験が推奨されているが,その普及は進んでいない.その第1の原因は遺伝毒性エンドポイント組込みによる一般毒性試験への影響である.この影響には手技的なものと試験結果へ影響を及ぼすものとがある.一般毒性試験結果に影響を及ぼす要因としては採血,投与回数,最終投与から剖検までの時間等があげられ,組込み試験導入の大きな妨げとなっている.第2の原因は組込みによる遺伝毒性試験感度の低下である.従来の遺伝毒性試験の多くは短期型の試験であり,その感度はCmaxに依存するため,反復投与一般毒性試験に組込むことで最高用量低下に伴う遺伝毒性物質検出感度低下をもたらした.しかしながら,精度の高いリスク評価を行うために,一般毒性だけでなく遺伝毒性や安全性薬理など多くのエンドポイントを同一動物で同時に評価できるメリットは計り知れない.現在開発中の反復投与肝臓小核試験法は一般毒性試験の手技にも試験結果にも全く影響を与えず,低用量反復投与でも高感度に遺伝毒性物質を検出できる優れた試験系であり,昨年末に開催された遺伝毒性に関する国際ワークショップ(IWGT)においても高い評価を得た.この反復投与肝臓小核試験法に関する共同研究の最新の成果およびIWGTでの議論を紹介する.また,現在の組込み試験の問題点を見直し,どのようにすれば一般毒性試験に簡易に組込めて精度の高い遺伝毒性評価,安全性リスク評価ができるか報告する予定である.