抄録
花き園芸植物は古くから交配育種により新しい花色や花形の作出が試みてこられたが、多大な時間と労力を要する。近年形質転換による分子育種は、従来育種では得られない形質を持つ花きの作出を可能にしている。花き園芸植物はゲノムやEST情報が乏しいが、シロイヌナズナの遺伝子が異種間でも機能し、容易に形質変化を誘導できることが示されている。一方でどの遺伝子が有用形質を付与するかは、形質転換体作出後でしか評価できないという問題もある。この問題を解決し、効率的に新規の有用形質を選抜する方法として、我々はマイクロアレイデータよりシロイヌナズナの花で発現が高い転写因子42遺伝子を選抜し、このキメラリプレッサーコンストラクトを混合してアグロバクテリウムに導入し、これを用いてトレニアを形質転換するというバルク感染を行った。得られた形質転換体348系統のうち、表現型に何らかの変化が見られた約200系統について導入遺伝子を調査したところ、8割以上が単一遺伝子の導入であった。また、42遺伝子中39遺伝子の導入が確認された。単一遺伝子導入系統のうち約3割、遺伝子別では22遺伝子で、花色や花形における明確な表現型変化が観察された。以上のように、期待通り花での形質が変化したものが多数得られ、バルク感染により効率的に新形質花きを作出できることが示された。現在新たなバルクセットでトレニアの形質転換を行っている。