抄録
イネのflo2変異体はデンプン生合成や貯蔵タンパク質に関わる遺伝子の発現量が低下し、種子の胚乳が白濁する表現型を示すことが明らかとなっている。このため、flo2変異の原因遺伝子はこれらの遺伝子群の発現を広範に制御する因子であると考えられる。精密マッピングを行った結果、この遺伝子座は第4染色体の110 cM付近の約37 kbの範囲に存在することがわかった。野生型と塩基配列を比べた結果、1つの遺伝子のコード領域内に終止コドンを生じる点変異が見つかった。また、独立した他の7系統のflo2変異体においても、この遺伝子に変異が生じていた。野生型のこの遺伝子のゲノム領域をflo2変異体に導入した形質転換体の種子は、正常な胚乳を生じ、胚乳デンプン組成も野生型に戻った。さらに、変異体で発現量が激減することがわかっているデンプン枝つけ酵素RBE1とアレルゲンタンパク質RA16の発現量も野生型と同程度に回復することが明らかになった。これらのことから、この遺伝子がflo2変異の原因遺伝子であることが同定された。そこで、この遺伝子をOsCEO1(Conductor of Endosperm Organogenesis 1)と名付けた。OsCEO1は葉と未熟種子で強く発現していることがわかった。酵母two-hybrid法により、OsCEO1と相互作用をする因子を探ったところ、14個の候補が得られた。