Journal of Surface Analysis
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解説
X線光電子分光法によるダイヤモンドライクカーボン薄膜の表面化学構造解析
鷹林 将高萩 隆行
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2013 年 20 巻 1 号 p. 25-54

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抄録
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は,sp2炭素・sp3炭素・水素からなるアモルファス炭素同素体である.本報では,著者らがこれまで行ってきたX線光電子分光法(XPS)によるDLC薄膜の表面化学構造解析について解説する.DLC薄膜のC 1sスペクトルは,Gauss関数を重畳したDoniach-Šunjic関数によって解析され,sp2/sp3炭素ならびに炭素‐炭素/炭素‐水素結合の差異を説明する4成分に波形分離された.本解析は,高分解弾性反跳検出(ERD)法による実水素量分布に対応した.他方,DLC表面の酸素官能基分析のための,簡単な数学的処理を加味した修正気相化学誘導体化(GCD)法も解説する.本法は解析を複雑にする副反応を考慮しており,DLC表面の酸化プロセスをよく説明することができた.以上の議論より,XPSはDLC表面の包括的な分析ツールになり得ると結論する.
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© 2013 一般社団法人 表面分析研究会
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