抄録
アグロバクテリウム(A. tumefaciens)は根頭癌腫病を引き起こす。腫瘍誘発遺伝子群のうち6b遺伝子(AK-6b)を導入したタバコでは、1.ホルモンフリー培地で増殖を続ける、2.オーキシンの極性移動が低下する、3.6b遺伝子は転写因子として働く、4.オーキシンの局在を改変する、などが報告されている。今回我々は、オーキシン局在の重要性を明らかにするために、デキサメタゾン(Dex)誘発性のプロモーター制御下に発現されるAK-6bをもつ形質転換タバコに対し、オーキシンの細胞への流入キャリア阻害剤としてナフトキシ酢酸(NOA)を投与した。Dexのみを含むMS培地ではAK-6b-タバコ芽生えは子葉の裏側や周辺に腫瘍組織が生ずる。in situ hybridizationによる解析から、AK-6b遺伝子発現と腫瘍組織の部分とは良く一致していた。一方、Dexと共に種々の濃度のNOAを含む培地では子葉の腫瘍は縮小し、下胚軸に新たな腫瘍化が見られた。ベクターのみを導入したタバコではDexやNOAが存在しても形態変化はなかった。オーキシン応答性のレポーター遺伝子DR5::GUSによるGUSアッセイでは腫瘍組織と正常組織の結合部分に顕著な活性が見られた。以上のことからAK-6bによって局在化されたオーキシンがNOAによって再分配され、さらなる形態変化が引き起こされたと考えられる。