抄録
植物ミトコンドリアゲノムには電子伝達系を構成する膜タンパク質、リボゾームタンパク質、rRNA及びtRNAをコードする約60の遺伝子が存在する。植物ミトコンドリア遺伝子の転写後の発現調節機構は、スプライシング、RNA編集、プロセシング及びポリアデニル化などが知られているが、その詳細なメカニズムは未だ明らかになっていない。ダイコンの細胞質雄性不稔に関わるミトコンドリア遺伝子としてorf125遺伝子が同定されており、その発現様式は植物ミトコンドリア遺伝子に典型的な複雑な転写産物パターンを示す。そこで、本遺伝子の転写後の発現様式に注目し、転写後の調節機構を明らかにする事を目的とした。orf125遺伝子の転写産物の分子種を明らかにするためにcircularized RNA RT-PCRを試み、プロセシング部位及び転写開始点を推定した。orf125遺伝子は上流のtrnfM遺伝子、下流のatp8遺伝子と共転写されていた。転写開始点の周辺には近年、シロイヌナズナで明らかとなったCNM (consensus nonanucleotide motif) 2プロモーター配列が存在した。また、プロセシング産物の3’末端を複数決定したところ、atp8のさらに下流まで転写されている事も明らかとなった。現在、orf125遺伝子の転写終結点の決定を試みている。