日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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スギ葉色変異体における葉緑体matK遺伝子の挿入変異と表現形質の関連解析
*平尾 知士渡辺 敦史栗田 学近藤 禎二高田 克彦
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p. 0738

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抄録
スギには斑入りをはじめとする幾つかの葉色変異体が収集・保存されており、中でも葉色が変化する系統として黄金スギがある。黄金スギは、3月から4月にかけて展開する針葉が黄白色の形質を示し、8月から9月にかけてその形質が緑色へと変化する。大庭(1971)は、黄金スギの葉色形質のほとんどが花粉親からのみ遺伝することを明らかにしており、加えてその葉緑体構造に変異が生じていることを明らかにした。針葉樹では葉緑体ゲノムが父性遺伝することから黄金スギの葉緑体ゲノムには何らかの変異が生じている可能性が高い。
最近、我々はスギ葉緑体ゲノムの全塩基配列を決定し、同時に黄金スギの葉緑体ゲノムの全塩基配列を決定した。比較解析を行った結果、黄金スギの葉緑体ゲノム上にコードされているmatK遺伝子にフレームシフトを伴う19bpの挿入の変異があることが分かった。さらにその変異をマーカー化し、黄金スギと野生型との交配から得られた実生群で遺伝子変異と表現形質の関連解析を行ったところ、matK遺伝子の挿入変異は黄金スギの形質を持つ実生個体のみに検出することができた。これらの結果から、黄金スギの葉色変異には葉緑体matK遺伝子の変異が強く関連していることが分かった。
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© 2009 日本植物生理学会
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