抄録
我々は、セルラーゼを利用したバイオエタノール生産に適したイネの開発を目指し、セルラーゼの過剰発現がイネにどのような影響を与えるかを調べた。イネのセルラーゼのcDNAをトウモロコシのユビキチンプロモーターに連結し、イネに導入した。形質転換頻度の低下は見られず、またRNAレベルで過剰発現が確認されたことから、単一のセルラーゼの過剰発現では致死的には働かないと考えられた。しかし、得られた形質転換体には葉の早期褐変や白化が頻繁に見られ、また低頻度ではあるが葉身の分岐や切れ込みが見られた。以上のことは、セルラーゼの恒常的過剰発現がイネに様々な生理的、形態的変化を引き起こすことを示している。従って、セルラーゼを用いたイネの改変は可能であるが、誘導プロモーター等を用いた発生異常の回避が必要であると考えられた。