抄録
シロイヌナズナのGFP-talinによるアクチン可視化株を用いた解析から、葉緑体光定位運動には葉緑体表面のアクチンフィラメント再構成・偏在化が関与することが示されている。野生株ではGFP励起用青色光連続照射によって逃避運動が誘導され、葉緑体アクチンフィラメントは一過的消失の後、葉緑体片側に再出現して偏在化し、その後、偏在部位を前端として葉緑体は運動を開始する。本研究ではこのアクチン再構成過程に対する赤色光同時照射の作用およびフォトトロピン変異体でのこの再構成過程を3秒間隔のイメージングによって解析したので、その結果を報告する。葉緑体逃避運動に対し赤色光同時照射は、弱赤色光で促進的、強赤色光では阻害的に働くが、アクチン再構成過程のうち、消失のタイミングには変化がなく、再出現のタイミングが変化することにより、運動開始のタイミングが変わることがわかった。また、逃避反応の変異体であるphot2、phot1phot2では葉緑体アクチン消失が起こらず、その後の偏在化も見られないことで運動が誘導されない。phot1変異体はアクチン消失、再出現いずれも起こるが、野性株に比べて早く起こり、結果として逃避運動の開始も早くなることがわかった。以上の結果は、複数の要因により葉緑体アクチンフィラメントのダイナミクスが調節されており、その結果として逃避運動が生じることを示唆している。