抄録
NIP5;1遺伝子は低ホウ素条件でのホウ素の効率的な輸送に必須であり、その転写産物の蓄積はホウ素欠乏で高まる(Takano et al, 2006)。本研究ではNIP5;1の低ホウ素栄養応答機構の解明のため、NIP5;1プロモーター領域(2.2k bp)と5’UTR(312 bp)領域のホウ素欠乏応答における役割について検討を加えた。
NIP5;1プロモーター領域を5’側から順に欠損させた各配列に5’UTR配列とGUS遺伝子を連結したコンストラクトを作成した。得られた各形質転換植物において、ホウ素欠乏および十分条件下におけるGUS活性を調べた。その結果、根のある特定の部分におけるホウ素欠乏条件での発現に、NIP5;1プロモーター内の3つの異なる領域が関与していた。これらの植物でのGUS活性はホウ素通常条件では検出されなかった。また、NIP5;1プロモーター-5’UTR-GFP-NIP5;1を導入した形質転換体の根では、GFP蛍光はホウ素欠乏条件下観察されたが、ホウ素十分条件下では観察されなかった。一方、5’UTRを含めずにNIP5;1プロモーターにGFP-NIP5;1を連結し、形質転換植物に導入したところ、GFP蛍光はホウ素欠乏条件下でもホウ素十分条件下でも観察された。以上のことから、5’UTR領域がNIP5;1転写産物のホウ素栄養に応じた蓄積に重要であることが示唆された。