抄録
シロイヌナズナの低親和型硫酸イオントランスポーターSULTR2;1は、植物体内の硫酸イオンの分配に働くと考えられている。一方、SULTR2;1の根における遺伝子発現は環境中の硫酸イオン濃度の減少(-S)に応答して増加し、地上部では逆に減少する。私たちは植物の-S応答の分子機構を明らかにすることを目的として、SULTR2;1の硫黄栄養応答領域の同定を試み、根におけるSULTR2;1の-S応答には3’非転写領域が必須であることを見出した。さらにSULTR2;1の3’領域に含まれるシス因子を同定するためのデリーション実験を行い、終止コドンより下流361-372-bp、450-459bpの二つの領域が-S応答に必要であることを示した。この領域はSULTR2;1の3’UTRよりも外側に位置することから、転写レベルでSULTR2;1の発現を制御していると推定した。また、SULTR2;1-3’領域は35Sプロモーター等を用いた場合にも効果を発揮することから、基本的な転写機構に作用すると考えられる。各種プロモーターを用いてSULTR2;1-3’領域の組織特異性を検討したところ、SULTR2;1-3’領域は根の基部側における発現を誘導することが明らかになった。