抄録
日本型イネにはプラスミド様の内在性dsRNA(Oryza sativa endoranavirus)が存在する。一般にdsRNAはRNA干渉のトリガーとなるが、内在性dsRNAは全ての組織の細胞から一定コピー数で検出される。我々は内在性dsRNAとRNA干渉機構の関係を解析するため、RNA干渉関連遺伝子ノックダウン系統における内在性dsRNAの有無を解析した。その結果OsDCL2ノックダウン系統T1世代から内在性dsRNAが検出されなかった。また、内在性dsRNAを保持する個体との交雑により導入したF1個体、さらにF2個体の解析を行ったところ一部の個体において内在性dsRNAの脱落現象がみられたことを以前に報告した。この関係をより詳細に解析するために内在性dsRNA由来のsmall RNAの検出をおこない、特定の発育ステージを除いて極微量のsmall RNAを検出した。そこで、先の脱落現象が見られたOsDCL2ノックダウン系統において同様の解析を行ったところ、small RNA蓄積量とdsRNAの脱落現象との相関は示されなかった。内在性dsRNA由来の検出されたsmall RNAは極微量であり、内在性dsRNAは安定に存在することから、内在性dsRNAは宿主のRNA干渉機構を回避することが示唆された。