抄録
シロイヌナズナのacl5変異株は,花茎の伸長に特異的な欠損を示す。この表現型を抑圧するサプレッサー変異株sac51-dの原因遺伝子は転写因子をコードし,そのmRNAには5つのuORFがある。sac51-dでは第4uORFに変異が生じた結果,転写因子が過剰翻訳されて茎の伸長回復がもたらされたと考えられている。本研究では,SAC51遺伝子の複数のuORFがそれぞれどのように発現に関与しているのかを解析するために,各uORFの開始コドンを破壊したプロモーター/5’リーダー配列にGUS遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した形質転換植物を作成した。得られた植物のGUS活性を測定した結果,20アミノ酸をコードする第1uORF,16アミノ酸の第2uORF,48アミノ酸の第3uORF,6アミノ酸の第5uORFの破壊では活性の低下,54アミノ酸をコードする第4uORFの破壊では発現の上昇が認められた。すなわち,第4uORFが特異的に下流のメインORFに対して翻訳抑制効果を持つ一方,他のuORFは翻訳促進効果を持つことが確かめられた。SAC51遺伝子は,ACL5によって作られるサーモスペルミンに応答して発現が増加する。そのシス配列を同定するためのSAC51プロモーターの解析もすすめている。