抄録
シスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)遺伝子の発現はメチオニンの代謝産物であるS-アデノシルメチオニン(SAM)に応答してmRNAの分解の段階で負に制御されている。この制御には、CGSの第1エキソンが必要十分な領域であり、この領域内の77-RRNCSNIGVAQIVAA-91という配列(MTO1領域)が特に重要である。試験管内翻訳系を用いた解析によって、mRNA の分解に先立ちMTO1領域の直後で翻訳が一時停止することが示されている。一般に新生ペプチドはリボソーム内部の出口トンネルという構造を通過することから、CGS新生ペプチドのMTO1領域は出口トンネル内で何らかの機能を発揮していると考えられる。そこで出口トンネル内においてSAM が新生ペプチドと相互作用しているという作業仮説を立てた。この仮説を検証するために、MTO1領域内の80番目のシステインと81番目のセリン を他のアミノ酸に置換したときの効果を解析した。またSAMのアナログであるS-アデノシルエチオニン(SAE)を用いて解析したところ、野生型のMTO1領域ではSAMとSAEで応答に差違がなかったが、80番目と81番目を様々なアミノ酸に置換した場合は差違がみられるものがあった。以上より、80番目と81番目の位置のアミノ酸がエフェクター分子のメチル基/エチル基の認識に関与している可能性が示唆された。