抄録
プロテアソームは生体内で短寿命タンパク質や異常タンパク質を分解する巨大なタンパク質複合体として機能している.植物ではサブユニットの多くが重複したパラログ遺伝子によりコードされている.これは植物プロテアソームの大きな特徴の1つだが,その生理的意義についての知見はほとんどない.当研究室での実験から,特定のパラログ分子の変異体が栄養ストレス過剰応答となることが示されており,パラログ間での機能分担の可能性が示唆された.また,プロテアソームのもつ3種類のペプチダーゼ活性は栄養ストレスに応じて変化することが既に報告されている.従って,植物細胞内には,様々な環境ストレスに対応した「環境ストレス適応型」プロテアソームが存在することが予想された.そこで,各環境ストレス条件下におけるプロテアソームのサブユニット構造を明らかにすることで,プロテアソームの構造・機能変換の実体解明を目指した.
そのためにまず,プロテアソームのアフィニティー精製およびMS解析によるハイスループットな構成サブユニットの同定系を確立した.さらに,精製産物を2次元電気泳動で分離することによりパラログ分子の判別に成功した.現在この実験系を用いて,栄養および酸化,病害等の環境ストレス下におけるプロテアソーム活性の変化とサブユニット構成の変換について解析を進めており,変異体を用いた遺伝学的な解析と併せて,これらについて議論したい.