抄録
シロイヌナズナのAtbZIP10は、プログラム細胞死や病害抵抗性、浸透圧調節などの環境応答機構に関与するbZIP型の転写因子である。我々の予備的な実験により、シロイヌナズナのグループCに属するbZIP型転写因子(bZIP-C: AtbZIP9,10,25,63)が、植物細胞中で非常に不安定であることがわかっている。本研究では26Sプロテアソームによる分解系に注目し、AtbZIP10のユビキチン化を介した選択的タンパク質分解機構の存在を明らかにすることを目的とした。シロイヌナズナの葉肉プロトプラストを用いてAtbZIP10-GFPを発現させた結果、一過的に発現したAtbZIP10-GFPの経時的な分解が、26Sプロテアソームの阻害剤であるMG-132の処理により顕著に抑制された。また、AtbZIP10のデリーションクローンを用いた解析により、bZIP-C間で高度に保存されているドメインIIを欠いたクローンでは分解が抑制されることも明らかにした。このドメインIIにはユビキチンが結合するリジン残基が高度に保存されていることから、AtbZIP10を含むbZIP-Cはユビキチン化を介した選択的な分解を受けている可能性が示唆される。現在in vitro ubiquitination assayによりAtbZIP10のユビキチン化を検証しているので、この結果についても合わせて報告する。