抄録
茎頂分裂組織における生理現象に関して、被子植物では、茎頂分裂組織や葉の形態形成にsmall RNAが関与すること、花成における春化依存促進経路で条件的ヘテロクロマチン形成が関連遺伝子の発現を制御することなどが報告されている。しかし、裸子植物においても同様の機構が存在するのか否かについての情報は、現在、皆無である。
スギは、一定の温度および日長条件下でジベレリン処理を行うことにより、挿し木苗に花成を誘導することができる。短日・恒温(8時間日長、15℃)条件下で休眠させた、2年生および3年生挿し木苗にジベレリン処理(100ppmまたは500ppm)を施し、7週間後(11月上旬)、自然日長、明期20℃暗期15℃の環境条件に移したところ、数週間の栄養成長を経て雌雄花が分化した。これは、ジベレリンによるスギの花成誘導にエピジェネティクスが関与することを示唆している。
そこで、本研究では、エピジェネティクスに関する分子機構を解明することを目的として、まず、生殖器官が分化する位置の特定を試みた。なお、今回、上記条件に加えて、雌雄花の分化誘導条件として、自然日長、明期30℃暗期25℃条件(明期25℃暗期20℃条件での2週間の移行期間を経る)を追加した。本発表では、各挿し木苗の枝毎の雌雄花の分化状態を解析し、その規則性について考察する。