抄録
シュウ酸は植物に含まれる有害食品成分として知られているが,その蓄積の植物生理学的意義の一つとして,重金属をキレートすることによりその無毒化に寄与する役割が提唱されている。私たちは,ツツジ葉においてNO2暴露により発現誘導されるジャーミン様タンパク質(RmGLP2)の機能解析を目的にこれをタバコ培養細胞で構成的に発現させたところ,当該タンパク質はアポプラストに局在し,スーパーオキシドディスムターゼとシュウ酸酸化酵素(OxO)の両活性を有することを見出した。OxO活性は野生型細胞から調製したアポプラスト画分ではほとんど検出されないのに対し,RmGLP2を過剰発現する形質転換細胞では有意に上昇し,その結果,シュウ酸レベルが野生型細胞の20%程度まで減少していた。シュウ酸含量と重金属感受性との関連を明らかにする目的で,細胞増殖に対する重金属の影響を調査したところ,重金属を含む固形培地で培養した形質転換細胞は,野生型細胞と比較して顕著な生長阻害を呈した。以上の結果は,重金属耐性におけるシュウ酸蓄積の植物生理学的重要性を示唆している。