抄録
高等植物は土壌液中の硫酸イオンを細胞内に取り込み、複数の酵素反応を経て多様な有機硫黄化合物を合成する。硫黄同化系の第一反応は、ATPスルフリラーゼが仲介する硫酸イオンのアデノシン5’-ホスホ硫酸(APS)への変換である。APSは、システイン合成経路と、硫酸化代謝物の合成経路に分配される。シロイヌナズナのゲノムには4つのATPスルフリラーゼ遺伝子(ATPS1、ATPS2、ATPS3、ATPS4)が存在する。各ATPS遺伝子の発現が抑制された変異体シロイヌナズナを取得し地上部におけるATPスルフリラーゼ活性を測定した結果、atps1変異体、atps2変異体およびatps3変異体の地上部では野生型植物と比較して有意に活性が低下していることが示された。また、各ATPS遺伝子のプロモーター領域の下流にATPSコード領域とGFPコード領域をつないだ融合遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナを作出したところ、ATPS1、ATPS3およびATPS4はプラスチドに特異的に局在するが、ATPS2は細胞質とプラスチドの両方に局在することが示唆された。さらに、各ATPSはそれぞれ細胞特異性が異なることから、生体内において異なる役割を持っていると考えている。