抄録
ミヤコグサ(Lotus japonicus)B-129系統から単離されたviridicaulis1(vic1)変異体はアントシアニンと縮合型タンニン(CT)がともに欠失している。CTは、カテキン類を含むフラボノイド重合体で、抗菌作用や食害昆虫に対する防御作用などが知られている。本研究ではCT生合成調節機構の解明を目的として、変異体における生合成酵素遺伝子の発現を調べ、VIC1遺伝子のポジショナルクローニングを行った。
茎から抽出したトータルRNAを用いて、RT-PCRにより各生合成遺伝子の転写物蓄積量を解析した。vic1 変異と標準系統MG-20および近縁種L. burttiiを交配したF1世代を自殖して得られたF2集団を材料とし、SSRおよびdCAPSマーカーを用いて連鎖解析を行った。
生合成遺伝子の発現解析からVIC1タンパク質はジヒドロフラボノール4-還元酵素遺伝子の調節因子であることが示唆された。VIC1は第5染色体のTM2085の近傍にマップされ、それを起点としたウォーキングクローン中にbHLHタンパク質をコードする遺伝子が見出された。野生型と二種の変異型(vic1-1、vic1-2)対立遺伝子の塩基配列を比較したところ、vic1-1とvic1-2は別の箇所に変異が認められた。現在、この遺伝子を用いた変異体の相補実験を行っている。